2005年09月15日

いちじくの木

秋の味覚はいいねえ。なし、きのこ、さつまいも、栗。そしていちじく。お隣さんの家に、いちじくの木がある。むかしおばあちゃんがひとりで住んでいて、今はどこか家族のところへ引っ越してしまったのだけれど、ひとりでは食べられないからと、いつも自由にいちじくの実をもがせてくれた。大きな木で、たくさんの実がなって、秋がくるのが1年じゅう待ち遠しかった。
このおばあちゃんの親戚が、今は空き家になっているこの家に越してくることになった。実際に越してくるのはまだ先のことだけれど、下見に来たその人は、枝が我が家にはみ出て邪魔だろうからと、いちじくの木と、その隣の柿の木を切ってしまった。ある日家に戻ると、見慣れた2本の木がなくなっていて、どうしていいかわからないほど悲しくなった。阿呆と思われるかもしれないけれど、これまでの人生で5本の指に入るほど泣いた。あの喪失感。言い表せない。忘れられない。ひとの家のものなのにね。
このいちじく、とてつもなくおいしかったのだ。舌にまとわりつくように甘くて、白い汁が苦くて、たぶんわたしは世界でいちばん、いちじくがすき。まあこんな風に、いちじくだけを延々と語れるくらいだもんな。秋になると、いちじくをもいで、ひたすら食べつづけた。木枯らしが吹くまで。いちじくのジャム?ケーキ?ふざけないでくれよ。あんなの邪道!いちじくに対する冒涜とすら思ってしまう。
で、いちじくの木。切ったといっても根ごと引っこ抜かれたわけではなく、株をすこし残して切られていただけなので、早速切り株から新芽が生えてきた。その生命力に驚くも、はじめはほんのひょろひょろで、ちょろっとついた実に十分な栄養を送ってやれるほど余裕もなかったのか、実は熟すこともなく、青いままでしぼんでいった。もうだめなのかな、とその秋は、何事にもやる気が出なかった。つくづく単純だと思う。いちじくに左右されるわたしの毎日。けれどそれから、どんどん枝ぶりは立派になり、以前とは比べ物にならないまでも、そこそこおいしい実がなりはじめ、そして今年。目をみはるほどに伸びた力強い枝には、ちいさな青い実がたくさん。木のちからってすばらしい。これから秋が深まるにつれ、ちいさな実はむくっと大きく膨らんで、むらさき色に体を染める。あのちいさな秋のよろこびをまた、どうかわたしのところへ届けてね。

itijiku1.jpg

かわいい実。すっかり立派になった枝。

itijiku2.jpg

いちじくは葉っぱのかたちもすき。
知ってる?葉っぱもちぎると断面から、あの白い汁が出てくるって。

itijiku3.jpg

カエルがひとやすみ。
posted by season at 20:49| Comment(0) | TrackBack(1) | しぜん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/6959043

この記事へのトラックバック

第1回目『青いままで』!!
Excerpt: ど〜〜も〜〜〜っ!! demdemです!! 「誰も望んでいない曲の解説・制作秘話」第1回目は、サモハン・ユンピョウ・チェンズの曲の中でもっとも「うんこみたいな曲だ」と呼び名の高い、『青いままで』をご..
Weblog: サモハン・ユンピョウ・チェンズ
Tracked: 2005-10-16 13:44
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。