2005年10月07日

ヤップ島旅日記・2

9月18日
ゆうべは深夜、真っ暗闇の中をヤップに到着したもので、あたりの風景とか、家のまわりの様子とか、当然ながらほとんど何も見えなかった。暗がりの中で感じることができたのは、肌にねっとりまとわりつくような湿気だけ。お日さまの光に包まれたヤップの姿はどんなだろう。太陽が昇ってかなりたったころ、うだるような暑さに目が覚めた。ふらふらと外に出ると、お父さんやお母さんはもう起きていて、息子さんやお嫁さん、いろんな人たちが思い思いに椅子にこしかけていた。おはよう、どうぞよろしく!みんなと笑顔で挨拶をして、玄関先に出る。青い空にヤシの木、バナナの木。目の前には海からつながる湾が広がって、なんてすてきなところだろう。ゆうべはスコールがあった。ザーッと激しい雨の音が、おぼろげに耳に響いていた。明日は雨かな、なんて寝ぼけながらに少し憂鬱だったけど、一転してこの素晴らしいお天気!愉快な家族たちも暖かく迎えてくれて、さあ、楽しい日々のはじまりだ。

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今日は島内を案内してくれるそう。朝ごはんを食べて、服は昨日のままでいいや、顔を洗って、みんなと少しお話をして、お父さんとお母さんと、それから親戚のおじさんと母、そしてわたしの5人で、いざ出発。それにしても、こんなに車が普及しているとは思わなかった。通りを行きかう車たち。けれどみんな、時速はあくまで30キロで、それがこの島の人たちの気性を現しているようでなんだかうれしくなってしまった。ちょっと町なか(ここは州都コロニア。けれど州都と言っても通り沿いにぽつりぽつりと民家が並ぶだけの、とってものんびりとした自然豊かな町なのだ)を離れると、そこはもう車のほとんど通らない一本道で、けれどここでもやっぱり、のんびり30キロ走行だ。誰も急がない。ゆっくりゆっくり、きっとここの人たちは、そんな風にして今まで生きてきたんだろう。人間の気性は昨日今日で、つくられるものじゃない。急ぐ必要もないことまでせかせか急ぐ、日本の毎日にふと思いを馳せる。わたしたちも昔はきっと、こんなんじゃなかったはずなのに。
車はくねくね曲がる道をのんびり走り、いつの間にか小高い丘のてっぺんまでやってきた。

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思わず目を背けたくなってしまうような光景。ジャングルの中の、朽ち果てた大砲。太平洋戦争時代の、負の遺産。日本軍のもので、その後、どこかの軍隊によって破壊されたんだそう。ヤップだけでなく、こんな風にジャングルの奥地に眠っている戦車や大砲は、世界中にどのくらいあるんだろう。激動の時代に巻き込まれていった、戦争とは無関係な現地の人々や、日本兵や世界の兵隊たち。この大砲のすぐそばには日本人墓地があった。けれどそこはすっかり木々や草におおわれて、ひと目には墓地とはわからない。今は平和なこの島で、かつて繰り広げられた惨禍。こころがしめつけられるようだった。
かなしい丘からは、それでも眼下に美しい海を見わたすことができた。この美しい景色は、少しでも人々のこころの慰みになっただろうか。くねくねと、また別の道を下りながら、海へ出る。

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雨季の海は決して美しいとは言いがたく、泥に濁っていた。生い茂るマングローブの木々の根元に、一艘のいかだ。ヤップでは今でもこんな手作りのいかだで漁に出る。ずっと変わらない生活。コテージの浮かぶ楽園のような青い海もいいけれど、わたしはこんな生活感のある海がすきだなあ、と漠然と思った。

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漁に出る男たちは、浜辺のメンズハウスでひと休みする。その名の示すとおり男たちの家ということで、女人禁制。今はどうなのかわからないけれど、昔のヤップでは男尊女卑が厳しかったそう。ヤシの葉葺きの伝統的な建築方法でつくられた素敵なメンズハウス。今ではコンクリートやトタンでつくられるものが多くなっているそうで、勝手ながらに残念だと思う。実は住民の家も今ではほとんどがトタンづくりで、わたしのお世話になったお家もその例外でない。ヤシ葺きの屋根はすぐに痛んでしまい、1〜2年ほどで葺き替えが必要になるんだそう。手間がかかって、面倒くさい。それで人々は寿命が長くて強度のある、トタンやコンクリート建築へ移行していくのだ。それだけではない。台風の発生しやすいこの地域で、強風や豪雨に耐える、強い家が求められるのは当然のことなんだろう。けれど熱帯の、あのうだるような暑さの中で、トタンの家にいるのはかなりきつい。熱が逃げずに凝縮されて、まるでサウナの中にいるよう。反対にヤシ葺きの建物では、すーっと風が通ってひんやり涼しい。昔ながらの建物には、デメリットもあるかもしれないけれど、それでもその地に合ったよさがある。よそ者の勝手な感傷かもしれないけれど、伝統的なもののこと、すこしでも見直してほしいなあ。お家のお父さんは、最近はヤシ葺きに見向きもしなくなった人が増えたと嘆いていた。昔ながらの方法で、家を建ててみたい、とも。
メンズハウスに対して、女性のウィメンズハウスというのは畑の中にあり、女たちはここで仕事の合間、休憩をする。そう、畑仕事は女の役目なのだ。ヤップの女たちはよく働く。その間、男たちは漁に出たり、メンズハウスで昼寝をしたり。

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まさに今、昼寝をしている男たち。

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夕飯は立派なマグロだった。
息子さんとそのお姉さんが釣りに出て、見事獲得した戦利品!大きくて、重くて、わたしの力では持ち上がらない。ネコもほしい、ほしい。漁師である息子さんがちゃちゃっと裁いてくれる。横で見ていて、かっこいいなあ、と思う。素晴らしい手さばき!あっという間にお刺身になったマグロは、日本のわさび醤油、ヤップのタマネギ入りレモン醤油で、おいしくみんなのお腹を満たしてくれた。まさに獲りたての新鮮なマグロ、身がぎゅっと締まってすごく美味しかった。海の恵みに感謝。ごちそう様でした。

ああ、なんて充実した1日。雨水をためたシャワーを浴びて、さっぱり、ぐっすり。
posted by season at 13:41| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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